2023.11.28

<濱永健太弁護士の連載コラム>
検証!障害者雇用促進事業
~法の趣旨から見る屋内農園型障害者雇用支援サービスについて~ 第1回

<濱永健太弁護士の連載コラム>
検証!障害者雇用促進事業
~法の趣旨から見る屋内農園型障害者雇用支援サービスについて~ 第1回

昨今、障害者がその能力を最大限発揮し、継続的に働き続けることのできる社会を目指して、国としても各種の法整備を積極的に行っております。その一環として、障害者雇用促進法(以下「法」といいます。)第43条は、企業が一定割合の障害者を採用すべき義務を課すことを内容とした法定雇用率制度を定めています。

本稿では、今回から4回に亘って、雇用義務を定める法の趣旨から見た屋内農園型障害者雇用支援サービスの適法性と今後の支援サービスに求められるものについて述べたいと思います。
1.障害者雇用促進法が定める雇用義務の趣旨
法第43条において障害者の法定雇用率の達成が要求されている趣旨は、企業において採用されるべき障害者の割合(障害者雇用率)を設定することで、障害者であっても一般労働者と同じ水準において採用される「機会」を確保するというものであり、これが同制度の中心的な目的であることは明らかです。

加えて、令和4年12月16日公布(令和5年4月1日施行)の改正によって法第5条が改正され、「職業能力の開発及び向上に関する措置」という部分が努力義務に追加されました。
つまり、従来の「適当な雇用の場を与える」「適正な雇用管理を行う」というだけでなく、障害者雇用における「質」も確保することを目的として、障害者のキャリア形成の支援という観点から、企業が障害者の職業能力の開発や向上を行えるような措置をとるべきであるとされています。
2.屋内農園型障害者雇用支援サービスの仕組み
屋内農園型障害者雇用支援サービスは、各企業が自社にて雇用した障害者(管理者及び就労者)に屋内農園の運営に従事してもらうことを通して、当該雇用者の就労の機会を提供することを目的としており、企業による運営に対してトータルでサポートするサービスです。
具体的には、障害者の採用(面接を含む)、労務管理、業務指導、植物栽培の技術指導、キャリアアップも含めた能力開発に関するアドバイスを利用企業に対して行うことによって、支援を行うサービスです。

そして、上記の採用から能力開発までのアドバイスを行う際に、障害者の業務特性やアセスメントという科学的なアプローチを通して行われているものもあり、単に雇用率確保のためのアドバイスではなく、障害者の視点に立ったサポートを行っています。加えて、企業自身で業務に適した応募者を見つけることが難しいことに配慮して、ハローワークや就労移行支援事業所、特別支援学校とも連携し、就労を希望する障害者の情報を提供しているサービス事業者もあります。

また、企業自身での貸農園の探索や農園運営が困難なことにも配慮し、企業ごとに区割りされた農園を貸し出した上で、農作物の栽培についての技術的指導、労務環境の整備や加工、商品化等の農園運営上の指導についてもきめ細やかにサポートが行われている点に特徴があります。

3.屋内農園型障害者雇用支援サービスは違法か
最後にこのような支援サービスの適法性についてですが、屋内農園型障害者雇用支援サービスの仕組みや同サービスは、明文の法律に反するものではなく、法第43条の趣旨にも反するものではありません。次回はこの適法性について、詳細を確認していきたいと思います。
(第2回に続く)
弁護士法人飛翔法律事務所 パートナー弁護士 濱永健太
弁護士法人飛翔法律事務所
パートナー弁護士 濱永 健太

2004年岡山大学法学部卒業、2008年立命館大学法務研究科法曹養成専攻修了、2009年弁護士登録と共に現事務所に入所、2015年パートナーに就任。
クライアント企業の立場に立って、企業間トラブルや労務トラブルに対するアドバイスと解決を行っている。
特に人材派遣会社での勤務経験を活かして、人材サービスに関する法務問題に注力している。
その他、広告やキャンペーンを規制する景品表示法・薬機法、不動産、相続の案件を多く手掛ける。


コラム一覧