2023.11.28

<貝沼春樹社労士の連載コラム>
ここがポイント!障害者雇用の事前準備

<貝沼春樹社労士の連載コラム>
ここがポイント!障害者雇用の事前準備

障害者雇用は事前にしっかり準備してから始めないとうまくいきません。企業が障害者雇用を始めるに当たり、推進体制や職場環境の整備や安全対策など、企業が押さえておくべき点をご説明したいと思います。
ポイントその1. 障害者雇用のための体制整備と職場環境整備
①経営者の明確な意思表示と会社全体の推進体制整備

障害者雇用を進めるためには、まず経営者がその目的・趣旨を明確に示し、全社に周知・理解させることがとても重要です。会社は障害者雇用をなぜするのか、本気で行うこと、そのために経営者が率先して動くこと、全社が一丸となって進めていくことを宣言します。

会社が障害者雇用をすると社員が知ると、社内では不安と戸惑いが起こります。障害者に身近に接したことがない社員の方であれば当然です。障害者および障害者雇用を知らない方には自然なことです。過去に流れたニュース等を見て、障害者に対してある種の先入観を持っている方もいます。障害者への接し方が分からない、自分たちの職場に受け入れたら負担が増えるのではないか等の反応が出ます。

それを払拭させることは簡単ではありませんが、避けて通るわけにはいきません。
このためには、会社が本気になること、経営トップが率先して発信して障害者雇用の理解を求めること、必要な体制をしっかり作ることがとても重要です。

障害者雇用を人事部門などを中心に推進しようとする会社の思いと、障害者を現場で実際に受け入れる側の気持ちにギャップがあるのは至極普通のことです。これが障害者雇用を成功させるための大きな支障となります。

これを乗り越えてギャップを解消するには、経営トップからの強い意思表示と発信の継続が必要です。推進する側は、障害者雇用をする趣旨(何のためにするのか、何を目指しているのか等)と会社全体の推進体制を明らかにし、受け入れ現場にしっかり理解してもらうよう努めることがとても重要です。この努力がなければ現場はそっぽを向いてしまいかねません。

例えば、正式な経営決定の手続きを経る、経営方針や経営計画に入れ込む、管理職層に対してして研修等を行う、受け入れる職場に対しても研修をして理解を深めてもらう、随時社内報や掲示板等で動きや成功事例を情宣する等々です。
②受け入れる職場と障害者本人の受け入れ現場での環境整備

障害のある人を受け入れるのは現場です。その現場で障害者を円滑に受け入れ、長期に就労してもらうためには、会社としてはその障害のある人の障害特性(例 疲れやすい、ストレスや環境の変化に弱い、コミュニケーションがうまくできない、周囲にうまく合わせることができない、対人関係が不得手等)・得意不得意・業務遂行能力・症状などの事前のアセスメント(事前調査と評価)に基づき、障害のある本人に合った仕事内容と職場の選定(ジョブマッチング)ことが最大のポイントになります。

障害特性は、人により千差万別で全く同じ人はいません。病名が同じでも同一ではありません。適切なジョブマッチングには、本人に対する就労に向けたアセスメント(事前調査と評価)がしっかり行われていることが大事です。アセスメントは就職前の訓練段階で就労支援機関等が行います。就職先の企業はその内容を把握して対応する必要があります。

事前のしっかりしたアセスメントがなければ、仕事内容や職場環境とのミスマッチが起こりやすく、早期に退職したりして長期就労に導くことは難しくなります。アセスメントを基にしつつ、本人の意見や希望考慮して必要な合理的配慮について丁寧に話し合い、配慮できること、できないこと、代替案などについて双方が合意できるよう取り組む姿勢が大切です。

実際に行う合理的配慮の内容およびその必要性について、受け入れる職場が十分理解することで、誤解や理解不足による職場での対人関係の悪化が防げ、障害のある人の定着が実現しやすくなります。加えて定期的または随時の面談などにより、困り事や悩み、希望を聞き、労働条件を含めた合理的配慮の見直しを行うことも重要です。
(第2回に続く)
あおば社会保険労務士・精神保健福祉士事務所 代表 特定社会保険労務士 精神保健福祉士 貝沼 春樹
あおば社会保険労務士・精神保健福祉士事務所
代表 特定社会保険労務士 精神保健福祉士 貝沼 春樹

三井住友海上火災保険とその関連会社に41年勤務。営業・経営企画・人事労務、関連会社の役員等を経験。その経験を活かして経営者目線で人事労務コンサルティングを行っている。特に障害者雇用に注力。精神保健福祉士・訪問型ジョブコーチでもあり、精神障害者・発達障害者・知的障害者を雇用する企業への支援を得意としている。


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