2024.02.26

<濱永健太弁護士の連載コラム>
検証!障害者雇用促進事業
~法の趣旨から見る屋内農園型障害者雇用支援サービスについて~
第4回

<濱永健太弁護士の連載コラム>
検証!障害者雇用促進事業
~法の趣旨から見る屋内農園型障害者雇用支援サービスについて~
第4回

前回までに、屋内農園型障害者雇用支援サービスの仕組みや同サービスが明文の法律に反するものではなく、法第43条の趣旨にも反しないことをお話しました。また、問題点として指摘されている点についての考察も行わせて頂きました。
最終回では、今後の支援サービスに求められるものについてお話したいと思います。
1.屋内農園型雇用支援サービスの効果と法の趣旨
我が国の障害者総数は、2022年3月時点において964.7万人となっており、年々増加傾向にあります。また、障害者の法定雇用率についても今後も引き上げられることが予定されています。このような時代だからこそ、企業が障害者を積極的に雇用し、かつ、障害者が働き甲斐をもって就労ができる場を提供するためのノウハウをアドバイスする支援サービスの重要性が益々高まるものといえます。

実際にも、支援をもとめてサービスを利用する企業が年々増加していること、従来の職場1年定着率が40%台から70%台(障害種別による)であったにもかかわらず、支援サービスの利用によっていずれの障害種別においても90%以上の1年定着率が達成できた旨のデータも存在することからしても、企業にとっても障害者にとっても有益なサービスであると言えます。特に後者の定着率の向上という効果は、障害者が常用労働者となり得る機会を確保し、職業生活における自立を目指すという法の趣旨に合致するものといえるのではないでしょうか。

2.今後の支援サービスに求められるもの
今後の支援サービスとって重要な点について障害者の視点から言えば、科学的なアプローチも駆使しながら、より障害の特性を理解し、特性に応じた適切な就労環境が得られるようにすること、キャリアアップに関する障害者の希望を適時かつ適切に把握し、就業の形についても複数の選択肢が得られるようにすること(支援サービスとしてはそれに向けたアドバイスを行うこと)が重要であるかと思います。
また、利用する企業の視点から支援サービスにとって重要な点を言えば、採用から労務管理まで企業が主体的に関わる機会を確保しながらも、専門的なアドバイスを通して企業による障害者雇用に関するノウハウを積極的に補完していき、企業自身が障害者にとっての適切な労働環境を整備するノウハウを蓄積できるようにしていくことが重要です。また、障害者雇用に関するノウハウは、障害者だけでなく、一般雇用の労働者についても、その人の特性に応じた労働環境の整備、あるいはコミュニケーションの取り方に関する技術の向上にも活かすこともできることから、支援のためのアドバイスを通して、会社全体のレベルアップも見据えてサービスを提供していくことが重要であると言えます。
このように企業、障害者、行政や自治体をつなぐ支援サービスを提供することで、障害者が共生できるような社会を目指すことが大切であるといえます。

なお、今後厚生労働省が指針を公表する旨の一部報道があります。仮に指針が公表された場合には、それを逆風として捉えるのではなく、むしろ適切な体制がどのようなものかが明確になったものとして積極的に受け止め、当該指針も踏まえながら適切な体制を構築していく機会にすべきと考えます。それによって支援サービス全体の質の向上や社会からの理解が進むように常に努力を続けていくことが重要ではないでしょうか。
(完)
弁護士法人飛翔法律事務所 パートナー弁護士 濱永健太
弁護士法人飛翔法律事務所
パートナー弁護士 濱永 健太

2004年岡山大学法学部卒業、2008年立命館大学法務研究科法曹養成専攻修了、2009年弁護士登録と共に現事務所に入所、2015年パートナーに就任。
クライアント企業の立場に立って、企業間トラブルや労務トラブルに対するアドバイスと解決を行っている。
特に人材派遣会社での勤務経験を活かして、人材サービスに関する法務問題に注力している。
その他、広告やキャンペーンを規制する景品表示法・薬機法、不動産、相続の案件を多く手掛ける。


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