障害者雇用現地見学会in大阪のご報告
8月21日、促進協関西支部設立を記念して障害者雇用現地見学会を開催し、2法人の事業所見学をさせていただきましたのでご報告いたします。
午前中は、株式会社シーアイ・パートナーズが運営される実践型クリエイティブスクール(自立訓練)「TECTEC スクール天王寺」と就労継続支援A型・B型「TECTEC クリエイティブ天王寺」を見学させていただきました。
いきなり就労ではなく育成環境をつくる
株式会社シーアイ・パートナーズの創業者・代表取締役CEOである家住教志氏は、外食産業大手で障害者雇用の人事に3年半従事していた際「わが国の社会構造では多くの障害者の育成環境が不足しているのではないか」という疑問を抱き、2015年から育成環境と福祉施設の連携事業を開始されたそうです。特別支援学校から大学・専修学校へ進学する障害者は0.03%で専門的な職業教育を受けずいきなり就労へと向かう構造、作業所から一般就労への移行実績も1.6%(2019年)と困難な状況から、障害をつくっているのは私たち福祉側ではないかとの思いを持ち、現在障害者の成長と働く力を育てる場を下記ステージ別で事業展開されています。
① 未就学児~小中高生(学齢期) 放課後デイサービス →目的:コミュニケーション能力と社会性を育成する(※未就学・小学生・中高生で施設分けされているのが特徴)
② 高卒以上 自立訓練、就労継続支援B型 →目的:働く人材としてのベースを育成する
③ 一般就労 就労継続支援A型、就労移行 →目的:企業と一体化した施設で共に働く
今回訪問したTECTEC スクール天王寺(上記②)は現役クリエイターからデザインのノウハウや技術を学ぶ場でスキルを習得後、TECTEC クリエイティブ天王寺(上記③)でクリエイターと共にSNS運用の代行やSaaSを駆使したICT・情報システムの構築、DTPデザインなどの業務を行っていました。これらの業務は障害者との親和性も高く、皆様集中してお仕事をされていました。今回は見学できませんでしたが「STARLIT WORK」では企業と協働し、企業内に就労移行支援を設置することで雇用を目指す事業を行い、健常者と同等の賃金・時給体系を実現されています。
障害者という言葉をこの国から無くしたい
家住様の「そもそも障害をつくっているのは私たち福祉側ではないか?ならば、それらの障害を解決できる環境をつくることが大事。障害者という言葉をこの国から無くしたい」という言葉が印象的でした。
株式会社シーアイ・パートナーズでは、スクール(放課後デイサービス・自立訓練)→就労継続支援B型→就労継続支援A型・就労移行といった育成ステージをつくることで、障害を解決するだけではなく自社のステージでの業務に合わない人に対しても、プロや福祉の専門家と連携して他業界への就労支援をされています。「ステージ別のステップアップモデル」「選択肢の多さ」「プロや福祉との協働からなる支援力」の3つが株式会社シーアイ・パートナーズの強みでした。
午後からは、株式会社UNTOLDが運営されている障害者向けサテライトオフィスサービス「サテライトオフィスNXT阿波座」と英語が学べる放課後等デイサービス「みらいジュニア」を見学させていただきました。
チームによって成長機会をつくる
サテライトオフィスサービス「サテライトオフィスNXT」では、利用企業毎に分かれた区画が用意されており、サテライトオフィス内で遂行する業務にはチームを形成して取り組んでいただくことを企業に推奨しているそうです。その理由として、仕事を実施していく中での他者と意見交換を進めることで得られる気づきと、自身が組織の一人であるという帰属意識を持っていただくことを重視しているとの事でした。
サテライトオフィス内で行う業務については、お勤めされる方にどのような業務を担っていただくかを検討する業務開拓からサポートし、担当される方の障害特性を認識した上での業務分担を考え、稼働するまではサテライトオフィスの常駐スタッフの緊密な連携のもとチーム形成を進めていきます。お勤めされる方が一企業の社員としてご活躍いただけるような利用企業毎に合わせたスキーム構築が特徴的だと感じました。
また、NXTの常駐スタッフは公認心理師・精神保健福祉士・ジョブコーチ等の資格を有しており、お勤めされる方との定期的な面談で働く上での目標設定やメンタルケアを行うことで、成長促進と安心できる職場環境を作ることにも注力されていました。こうした環境下で企業からの評価を得られた方が、サテライトオフィスから本社の部署へ異動しキャリアアップされた事例もあるそうです。
次に、未就学児から18歳までの主に発達障がいである児童を対象とした英語が学べる放課後等デイサービス「みらいジュニア」を見学させていただきました。海外の外国人講師とのオンライン英会話や宿題、遊びなどを通じて学ぶ場を提供し、15分間程度の短時間のレッスン・視覚化したテキストなど、発達障害の特性に配慮した教育から、早い段階で社会性を身につけることの重要性を認識することができました。
わが社は「福祉」を事業としている会社
株式会社UNTOLD 代表取締役の春海貴信氏の「わが社は福祉を事業としている会社です」という言葉は、ご自身が介護保険事業・障害福祉サービスなど13年間福祉に携わった経験から「福祉の心」を中心に据えつつも、「福祉の枠を超えた視点・行動」を持ちながら事業展開されている表れとして印象的でした。サテライトオフィスでお勤めされる方が企業の一社員として業務を遂行し、活躍してキャリアアップしていただくことが企業内の意識を変え、その先のダイバーシティ経営の実現に近づいていくと述べており、ここに春海氏の「人は人に必要とされること、人に愛されることが生きる意味となり、すべての動力である」という思いが体現されていると感じました。
【参加者の声】
・就労継続支援A型事業 Aさん
サテライトサービスについては基礎的な知識しかない状態での参加でしたが、良質な現場の声を直に聞くことで曖昧なイメージだった部分が腑に落ち、驚きと納得の連続でした。
・障害福祉サービス事業・就労継続支援B型事業 Bさん
TECTEC様の新しい取り組みやサテライトサービス事業に関する知見が広がっただけではなく、多くの現場の皆様とつながることができた貴重な時間でした。企業と福祉の「あわい」を見せていただいた感じです。あちら側とこちら側ではなく、共に創る未来に大きな可能性を感じました。
・障害者雇用促進事業(サテライトサービス) Cさん
とても学びの多い見学会でした。促進協開催の交流の場を通じて、当社でも「事業者と協働して何ができるか?」を考える良い機会になりました。