2023.11.28

包摂的社会の意識広がる
~「新たなフェーズ」に向かう障害者雇用~

包摂的社会の意識広がる
~「新たなフェーズ」に向かう障害者雇用~

障害者雇用をめぐる法整備が拡充し、包摂(ほうせつ)的社会の意識が広がるなか、民間企業の取り組みに注目が集まっています。厚生労働省は、2023~27年度の5年間を対象とする「障害者雇用対策基本方針」を策定。障害者雇用の質の向上や就労ニーズを踏まえた働き方の推進を盛り込み、「企業の責務」を明確化しました。

2024年4月には法定雇用率の段階的引き上げや、短時間労働者の適用拡大など、障害者雇用の促進につながる新たなルールがスタートします。就労拡大は一段と進む見通しですが、当事者である障害者の選択肢拡大や定着率向上など、社会が一丸となって取り組むべき課題は山積しています。こうした変化を目前に控え、一般社団法人 日本障害者雇用促進事業者協会(促進協)は、民間事業者の衆知を結集し、社会との積極的な対話を通じて、業界全体の信頼向上と障害者雇用の健全な発展に貢献していきます。
押さえておきたい5つのポイント
1.法定雇用率の段階的上昇
障害者雇用を巡る法整備が加速しています。
直近の動きと現場の実態を整理すると、まず注目されるのが「法定雇用率」の段階的アップです。企業には、全従業員数に対して一定割合以上の障害者雇用が義務付けられており、法律に基づいて「5年に1度の見直し(雇用率アップ)」があります。最新(2023年)の民間企業の法定雇用率は「2.3%」ですが、来年(2024年)4月から0.2%ずつ段階的にアップして2026年7月には「2.7%」に上昇します。

2.精神障害者が増加傾向
企業が雇用している障害種別の内訳は、身体障害者が35.8万人、知的障害者が14.6万人、精神障害者が11.0万人です。身体障害者が過半数を占めていますが、高齢化などで近年は伸び悩んでおり、2022年には初めて減少に転じています。それに代わって、精神障害者が増えています。

3.過半数企業が法的雇用率を未達
雇用数は年々増えているものの、障害者雇用が意識の高い一定の企業に偏っており、企業全体に広がっていません。法定雇用率の達成企業の比率をみていくと、1970~99年代は50%超。しかし、2000年代になると50%を割り込み、一時は40%ギリギリの時期も。2014年ごろから再び比率は上昇を続けるようになりましたが、最近は過半数を割る48%前後で推移し、上昇の兆しがみられません。

障害者雇用促進法は時代とともに進化し、企業の社会的責務や役割も広がっています。企業としては法令遵守と変化する法定雇用率の充足が求められ、障害者の迎え入れや能力を存分に発揮してもらうための環境づくりが急務です。新たなフェーズに入る障害者雇用の流れを契機に、促進協には企業と障害者の双方を支援・サポートする役割と責務が高まっています。

4.最新の法改正と新たなルール
2022年の臨時国会で、新たなルールを盛り込んだ改正障害者雇用促進法が成立しました。ポイントは「企業の責務」と「質の向上」を初めて明文化したことで、(1)障害者の職務能力の開発と向上(2)短時間労働の法定雇用率算入(3)多様な就労ニーズを踏まえた働き方の推進(4)企業が実施する職場環境の整備や能力開発のための措置への助成――を推し進めます。

これに伴い2023年4月から、有限責任事業組合(LLP)算定特例の全国展開や在宅就業支援団体の登録要件の緩和、精神障害者の算定特例などが実施され、2024年4月からは短時間労働者の算定特例、障害者雇用調整金・報奨金の支給方法の見直し、障害者雇用調整金の支給調整、報奨金の支給調整などがスタートします。併せて、助成金の新設と拡充も進みます。

5.いわゆる「代行ビジネス」への対応
2022年の法改正では、衆参の附帯決議の中で「雇用率の達成のみを目的として雇用主に代わって障害者に職場や業務を提供するいわゆる障害者雇用代行ビジネスを利用することがないよう、事業主への周知、指導等の措置を検討すること」が決議されています。促進協をはじめ、障害者雇用の総合コンサルティングを担う事業者は、企業や事業者に対する賛否の声があることも踏まえ、個社だけでなく業界自身で襟を正して透明性を高め、利用企業と当事者である障害者により多くの正しい情報を発信していかなければなりません。

厚生労働省や障害者雇用にかかわる各種団体などと情報交換を密にして連携し、次の動きを掴みながら正しい業界の発展と雇用促進に寄与していきましょう。
取材協力:株式会社アドバンスニュース
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