2024.01.31

最新の法定雇用率、かろうじて過半数超え
~2024年の「支援ビジネス」、厚労省は見守る構え~

最新の法定雇用率、かろうじて過半数超え
~2024年の「支援ビジネス」、厚労省は見守る構え~

障害者雇用状況の調査結果から見える最新動向

厚生労働省が昨年暮れに発表した2023年「障害者雇用状況」調査(6月1日時点)によると、企業の障害者雇用数は64万2178.0人(前年比4.6%増)と20年連続で増加し、実雇用率も2.33%(同0.08ポイント増)と、どちらも過去最高を更新。2.3%の法定雇用率を達成した企業は5万4239社で、比率は50.1%(同1.8ポイント増)とかろうじて過半数を上回りました(短時間勤務の場合は0.5人にカウント)。今後の障害者雇用の議論や資料は、この数値を最新データとして活用することになります。

精神障害者の伸び顕著、未達企業で雇用皆無は6割超
障害の内訳は、身体障害者が36万157.5人(同0.7%増)、知的障害者が15万1722.5人(同3.6%増)、精神障害者が13万298.0人(同18.7%増)で、これまでと同様に精神障害者の伸びが目立ちます。

一方、法定雇用率の未達成企業は5万3963社あり、そのうち不足数が0.5人か1人の企業(1人不足企業)が66.7%の多数を占めています。未達成企業のうち、1人も雇用していない企業は58.6%にあたる3万1643社と改善傾向はみられませんでした。親会社の実雇用率に算入できる特例子会社は598社(同19社増)で、雇用者は4万6848.0人(同2991.0人増)に増えています。

教育委員会は依然未達のまま
公的機関の雇用数と実雇用率は、国が9940.0人、2.92%、都道府県が1万627.5人、2.96%、市町村が3万5611.5人、2.63%、教育委員会が1万6999.0人、2.34%でした。法定雇用率は2.6%、教育委員会が2.5%であり、教育委員会が依然として未達成のまま。独立行政法人は1万2879.5人、2.76%となっています。

法定雇用率は企業が2.3%、国と自治体は2.6%(教育委員会は2.5%)。障害者雇用促進法の改正により、企業の雇用率は今年4月から2.5%、26年7月から2.7%に段階的に引き上げられます。


労働政策審議会 取材レポート

12月労政審でテーマに挙がった「支援ビジネス」
昨年12月27日、労働政策審議会の障害者雇用分科会が開かれ、「障害者雇用ビジネス(厚労省は「代行ビジネス」と呼称)の実態把握」について、同11月末時点の調査結果を報告しました。実施企業は32法人、障害者の就業場所は152カ所。最も多いのは「農園」の110カ所で、「サテライトオフィス」が38カ所でした。利用企業は延べ1212社以上、就業障害者は7371人以上となり、いずれも前回調査より増加しています。加えて、把握した懸念される課題と具体的な指導助言の内容なども併せて報告しました。

委員から指摘挙がるも厚労省は「見守る」姿勢
審議会委員からは、今後も活用企業が増えていくことを想定して、法律の趣旨と単なる法定雇用率確保のための利用を避けるよう周知を求める意見が相次ぎました。障害者団体からは、働ける場所の提供や提案に感謝しつつ、「企業にはもっと健常者と一緒に働くことで企業価値やシナジー効果を見いだしてほしい」との声も。厚労省は「趣旨などはリーフレットを作成して周知に努めているほか、代行ビジネスの課題と好事例の両方を引き続き収集、把握していきたい」と答えました。

審議会後の取材に厚労省幹部は、「(担当課として)継続的に実態把握に努めているが、これをもって何か規制などを考えている訳ではない」との考えを明らかにしました。また、支援ビジネスの活用について「法律の趣旨や法定雇用率の概念を逸脱したものでなければ、増えていくことを咎めるものではない。事業者による業界団体も発足したので、キャッチボールしやすくなったのは確かだ」との認識を示し、業界の自助努力と活動に期待をにじませました。

【参考:2023年12月27日公開資料】
■いわゆる障害者雇用ビジネスに係る実態把握の取組について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001184411.pdf

取材協力:株式会社アドバンスニュース
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