2023.11.28

障害のある人とともに楽しむ日本文化
~ユニバーサル茶会「しょーがい茶」~

障害のある人とともに楽しむ日本文化
~ユニバーサル茶会「しょーがい茶」~

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しょーがい茶2020の様子。障害のある人とともに本格的な茶会を楽しむ
コロナ自粛ムードから本格的に回帰した今秋は、食、文化、スポーツなど各地で様々なイベントが開催されていますが、そのような場面で障害のある人に出会うことや、一緒に参加することはありますか?障害のある人との共生は「ともに働く」こと以外にも、様々な場面で開発の可能性があるように思います。その一例として、障害のある人とともに楽しむ茶会「しょーがい茶」をご紹介します。
「しょーがい茶」は、プロの茶人を亭主とした本格的な茶会を、障害のある人を含むグループで楽しむことができるプログラムです。私は三渓園(横浜市中区の日本庭園)の茶室にて開催した2020年秋、このプログラムの企画に関わらせていただき、参加しました。
「しょーがい茶」では、障害のある方々の手作りによる抹茶や茶碗、和菓子、花、花器などを使用し、その制作を担当された方などをお客様としてお招きします。

さらに「しょーがい茶」では、伝統的な作法の中にある「茶道の哲学・精神」を大切にしつつ、お客様の身体や感覚の「違い」に着目し、各自に合わせたもてなし方を創造します。例えば、下肢に障害のある方が、段差のある茶室に入り、畳の上に座るとき。半身に麻痺のある方が、茶碗を持ってお茶をいただくとき。茶道の基本動作では対応できないことがたくさん出てきます。でも、それこそが「しょーがい茶」の醍醐味。そのような「違い」をポジティブにとらえ、それぞれの障害特性に合わせて、即興で振舞いを工夫します。その結果、障害があってもなくても、思ってもみなかった発見と体験を共有できるのです。こうして、全く新しい「ユニバーサルティ」のスタイルが生まれます。
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片腕が不自由なお客様には、器を支えておもてなしする
日本古来の茶道は、「人と人の関係をフラットにする」ことを目的の一つとして生み出され、伝承されてきたといわれています。美味しいお茶とお菓子、茶会の雰囲気を楽しむとき、障害のあるなしすらフラットになる。障害のある人とそうでない人が、一緒に本物の日本文化を味わうことによって、ささやかでありながら本物の共生社会を体験することができました。こんな体験ができる機会や場所が、身近なところにたくさんあるといいな、と日頃から妄想しています。
皆様も秋の陽気の中、障害のある人との「違い」に触れる機会を持ち、楽しんでみてはいかがでしょうか。

しょーがい茶2020記録動画
https://youtu.be/jrKbg4L9iTg
写真・動画提供:NPO法人読書普及協会
吉川 典子(よしかわ のりこ)主任研究員・社会福祉士
吉川 典子(よしかわ のりこ)
主任研究員・社会福祉士

1999年社会福祉士資格取得。子どもの相談援助や生活支援の現場を経て、中間支援団体のソーシャルワーカーとなり、地域福祉やまちづくりをベースとした、高齢、障害、児童分野の人材育成やネットワーク創出事業を担当。特に就労による障害者の自立促進、ソーシャルインクルージョン等に関する多数の事業・プロジェクトの企画運営、イベントプロデュース、執筆・編集、講演活動などをおこなった。2019年立教大学21世紀社会デザイン研究科博士課程前期課程修了。2021年に独立し、障害者の就労・雇用コンサルタントとして活動中。2023年より促進協主任研究員、㈱ESC代表取締役。


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