2024.01.31

障害=違い=価値
~右向きヒラメから学ぶ~

障害=違い=価値
~右向きヒラメから学ぶ~

不連続性の高い世界で必要なこと

2024年は災害・事故のニュースからのスタートとなりました。元日の石川県能登半島地震、翌2日には羽田空港での航空機衝突・炎上事故。2023年までの数年を振り返っても、地球温暖化による異常気象、新型コロナパンデミックなど、私たちが体験したことのない事象への対応を迫られることは、今後も続くといわれています。
慶応義塾大学SFC教授の安宅和人氏は、データサイエンスによる分析から未来を予測し、「これからも起きる自然、経済社会のダイナミックな変化、想定外の事象の中で日本が生き残るために、多様性が不可欠」と述べています。「⼈と取り組みに⼗分な多様性を担保することが大切であり、極度な最適均質化は壊滅的な打撃につながる」というのです(注1)。

右向きヒラメの存在から考える障害と多様性
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2023年11月7日 NHK首都圏ニュースより引用
安宅先生の講義を受けた後の昨年11月、興味深いニュースに出会いました。「茨城県鹿嶋市の沖合で、『右向きのヒラメ』が釣り上げられた」というのです。通説では「左ヒラメに右カレイ」と言われるように、腹を手前にして顔が左向きなのがヒラメ、右向きなのがカレイだそうです。釣った人は、船の上で釣ったヒラメに包丁を入れようとして角度が合わないことから、顔の向きが通常と違うことに気づきました。

1000匹に1匹程度だという右向きヒラメ。ヒラメの世界では「障害」というべき事象なのではないでしょうか。右向きのヒラメは、仲間との差異に気づいていたか、仲間は彼(彼女?)とどのように共存してきたか、そこに合理的配慮はあったか?など、妄想が膨らんでしまいます。

前段の話に戻ると、私たちの活動のメインテーマである「障害」は、均質化されない多様性の一例といえると思います。安宅氏によると、「何が生き残るのかは結果的にわかることであり、予測できない」。右向きヒラメの存在は、競争の激しい自然界で生き残るために不可欠な多様性なのかもしれません。

(注1)未来創造リーダー養成塾(慶応大SFC研究所×日経ビジネススクール主催)2023年7月14日講義内容より引用
吉川 典子(よしかわ のりこ)主任研究員・社会福祉士
吉川 典子(よしかわ のりこ)
主任研究員・社会福祉士

1999年社会福祉士資格取得。子どもの相談援助や生活支援の現場を経て、中間支援団体のソーシャルワーカーとなり、地域福祉やまちづくりをベースとした、高齢、障害、児童分野の人材育成やネットワーク創出事業を担当。特に就労による障害者の自立促進、ソーシャルインクルージョン等に関する多数の事業・プロジェクトの企画運営、イベントプロデュース、執筆・編集、講演活動などをおこなった。2019年立教大学21世紀社会デザイン研究科博士課程前期課程修了。2021年に独立し、障害者の就労・雇用コンサルタントとして活動中。2023年より促進協主任研究員、㈱ESC代表取締役。


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